

夏大阪へ話しに行ったとき奥さんがわざわざお出で下さ
って御病気のこと伺ったのですが、少しお休みになれば良く
おなり○○○なりましたので、それに何かと多忙にかまけ、お見
舞○思っている申訳ありません。数日前中西靖忠(*)さんが
見えてのお話では近ごろ少し熱がお高くて入院されるか
もしれぬとのこと、その後御経過はいかがですか。心配は堪え
ません。奥さんもおつとめのことゆえ御入院も中々御不便
かと思いますが、このさいやはり入院して十分治療をお受けに
なった方がよいのではないかと思います。いずれにせよ日本
詩壇のため大事のお身体、自分一人のことと思われず
に十分御自重御加療のほど切望いたします。
さっそくお見舞に出たいとも思いましたが、とりあえずお手
紙で申上ます。私どもでできること何なりとお申出下さらば
幸です。奥さまによろしく。家内からもお大切にと申しており
ます。 十月十二日 桑原武夫
伊東詞兄
二伸。只今印税が入りましたので、失礼ですが少しここに封入しました。
お互の間のことゆえ非礼はおとがめなく御入院の費用の一部に
お使い下さらば幸甚です。
(*)住吉中学の同僚
フランス文学者の桑原武夫は京都大学時代の静雄の先輩で、文面にある通り、桑原は当時のお金で3万円を生活の足しにと同封しています。静雄の没後、桑原は伊東静雄全集の編集もつとめました。
- 杉山 平一
- (1914-2012)
- 詩人
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拝復
大変御無沙汰してをります。
いつも庄野氏や織田氏を通じ御病状
伺ひお案じ申上げてをりますが、この度
は突然本をお送り申上げましたにも拘は
りませず、過分のお言葉を頂き、大変恐縮
いたしました。伊東様のやうな方にお読み頂け
たらといふのが、本を出すときの、念願でござい
ましただけに、本当にうれしく存じました。御恢復
の日を、神かけて念じ上げてをります。
右御禮旁々御見舞迄 敬具 -
杉山平一は伊東静雄の後輩格にあたる詩人で、その著『戦後関西詩壇回想』で、静雄を始め、関西を拠点にした詩人の姿を活写しています。畏敬していた先輩詩人への思いに感動します。
写真にみる伊東静雄
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家族写真
(1930年)
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北三国ヶ丘に転居後に撮られたと思われる
(1930年代)
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詩集「春のいそぎ」静雄による前書き
(1950年代)
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- 国立大阪病院長野分院での写真(1950年代)