堺市 図書館トップページ地域資料のページデジタル郷土資料展目次手紙にみる伊東静雄> 美原時代 
戻る

堺大空襲にあった伊東静雄は、現在の美原区北余部に居を構えます。故郷長崎県と似た景色に、長い間とまっていた詩作が動きだします。美原の田園風景に影響を受けた詩を発表しており、第四詩集「反響」を出版しました。

堀 辰雄
(1904-1953)
小説家
画像:堀辰雄自筆原稿用紙

 伊東静雄様
        七月十六日、辰雄
こんど「四季」を再刊させることになり、当
分小生編輯を引受けました。貴兄の御住所
なかなか分からず、失礼してをりましたが、
漸つとこれで届くだらうと教はりました。
 もし詩がお出来になりましたら、一篇でも、
或は三四篇まとめてにても、結構ですから、
是非お送り下さい。〆切は毎月二十日となつてゐます。
        八月二十日までにいただけたら第三号掲載、
原稿は角川書店 東京都板橋区小竹町二六九〇にお送り下さい。
 小生病傷の上、田舎暮らしのため、思ふやうな
編輯も出来かねます、今後何卒御援助下さい。

戦後、雑誌「四季」の再開に際して、堀辰雄が伊東静雄に同誌への寄稿を呼びかけたものです。「四季」には詩「中心に燃える」が掲載されました。

角川 源義
(1917-1975)
KADOKAWAグループ創業者・国文学者
画像:角川源義自筆手紙1

御手紙ありがたく拝見いたしました。堀さんの
絵はがき、まだとゞかぬ由案じてをりま
す。この手紙□御手もとに参ります
頃までとゞいてをりませぬやうでし
たら、御しらせ下さいませ。
定本詩集こと何よりの事に存じ
ます。目次とも百九十頁位になる
やう御配慮ねがひたく、また詩
作品見ひらきになるやう、あらか
じめ御指定下さい。活字は五号
がよろしきかと存じます。行間五
号全角ですと、十二行から十三行
入ります。
四季正月號の玉稿お待ちして
をります。十一月上旬までに御送

画像:角川源義自筆手紙2

り願ひたく存じます。
潁原退蔵先生に近頃御逢ひに
なりませんか。小説を四季に書いて
みたいと申しておいでになりました。
たのしみにしてをります。
          角川源義
 伊東静雄様

角川源義はKADOKAWAグループの創業者であり、辺見じゅん・角川春樹の父です。

文面から角川書店で詩集出版の計画があったようですが、詳細は不明です。

檀 一雄
(1912-1976)
小説家
画像:檀一雄自筆手紙

 今般左記に仮寓致しました。
「午前」「文化展望」等有難く存じました。
  八月二十日  小生、近頃清水山と
いふ寺の上に入山、詩と文章の荒行を
やつてをります。いちどそちらにも向ふ心□昇、
でをりますが、   福岡県山門郡東山村大和
早く落着      字朝日 村山方
いて旅がしたいものです。  檀 一雄

戦後、多くの同人誌が創刊・再刊され、静雄もそれらからの呼びかけに応じ、多くの詩を発表しています。

檀一雄は約10年前の静雄の出版記念会にも出席していました。