史料の収集
『堺市史』編纂の史料収集方法としては、史料自体の入手と複製の2種類の手法がとられました。
入手された史料
史料自体の入手に際しては、
の3つの方法がとられました。
入手された史料の多くは現在中央図書館に伝わっています。
購入された史料:堺市全図及商工業独案内
明治24(1891)年に印刷された堺市の地図です。近代的な地図でなく、近世の絵図の特徴を残していることが見て取れます。
地図の周りには名刺広告のように商工業者の名前や住所が掲載されており、これが商工業者への案内となっています。
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- 堺市全図及商工業独案内
堺市役所から引継された史料:『大阪府泉北郡三宝村誌』
大正時代の筆耕資料で、三宝村(現・堺市堺区三宝町あたり)の地名の由来や名所、産業等が書かれています。
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- 『大阪府泉北郡三宝村誌』
市民から寄贈された史料:『耳文書』
「耳」という家に伝わった古文書で、上中下の3巻の巻き物に仕立てられています。当館では他数点の耳家の史料と合わせ、『堺耳家文書』として管理しています。『耳文書』に収録された古文書のいくつかは、『堺市史』やのちの『堺市史』続編に翻刻が掲載されました。
なお耳家は『日本全国商工人名録』(明治31(1898)年発行)によれば、料理店及旅人宿「耳卯楼」を経営しており、大正14(1925)年にはうどんすきの「美々卯」を開店しています。
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- 『耳文書』
『書籍台帳』
上記の入手された史料は『書籍台帳』にイロハ順のリストでまとめられました。
「番号」「購入又ハ寄贈ヲ受ケタル年月日」「書籍名」「著者」「価格」「冊数」「摘要」の記入欄があり、これを紐解くことで史料の来歴を知ることができます。例えば『耳文書』は昭和3(1928)年3月に寄贈されたことがわかります。
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- 『書籍台帳』
新聞記事スクラップブック
また、新聞記事も堺関係のものを切り取って収集されました。中央図書館では市史編纂部によるスクラップブックを4冊所蔵しています。
新聞記事には堺市史編纂についての記事も見られ、紙上で史料紹介や史料提供の呼びかけが行われていたことが確認できます。
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- 新聞記事スクラップブック
複製された史料
入手できない史料は、筆写や撮影といった方法で複製されました。筆写された史料には文献や絵図等、撮影された史料には絵画や掛軸、街並み等があります。
『堺市史史料』
筆写複製された史料のうち文献資料は『堺市史史料』と題された145冊の資料集にまとめられました。『堺市史史料』はまず明治以前と以後の大きく2つに分けられ、さらに明治以前を13部門、明治以後を15部門と細かく分野別に分けて資料を収録しています。収録された史料のなかには原本が行方不明となっているものも多く、現在では研究の際、『堺市史史料』が典拠とされることも少なくありません。
なお堺市立図書館では『堺市史史料』の目次を作成し、『堺市史史料目録』として公開しています。電子版もご覧いただけます。
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- 『堺市史史料』
摂州泉州 堺町之図
町絵図も筆写されました。この史料は文化2(1805)年の環濠内の堺の町絵図です。このころは大小路を境に北側が摂州、南側が泉州とされていたことが見て取れます。
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- 摂州泉州 堺町之図
妙国寺蘇鉄之図
絵画も筆写されました。こちらは堺区にある妙国寺の蘇鉄を描いており、木板印刷から筆写されたものを、さらに筆写しています。
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- 妙国寺蘇鉄之図
『堺市史史料』写真編
撮影された史料は一括して『堺市史史料』写真編と呼称されています。枚数は重複を除き800枚近くにのぼり、中央図書館では個別に台紙に貼り付けた大判の写真と、22冊のアルバムに収められた写真の2種類を所蔵しています。撮影に使用されたガラス乾板は堺市博物館が所蔵しています。
なお中央図書館では『堺市史史料』写真編の目録を作成し、『堺市史史料目録 写真編』として公開しています。
また写真をスキャンしたデジタル画像を堺市立図書館デジタルアーカイブよりご覧いただけます。
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- 「天文板論語板木」
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- 「堺八景」其ノ七 僲陵晴雪
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- 「岸和田紡績K.K堺工場」
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- 「住吉神輿宿院渡御之光景」
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『資料採訪目録』
上記の複製された史料は『資料採訪目録』より確認できます。原史料の所蔵者ごとの史料リストとなっており、複製済みの史料には「済」印が押されています。
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- 『資料採訪目録』